塩素系溶剤専用車のガイド

目次 ■入口に戻る


■液化塩化メチル
 高圧ガスの仲間で、溶剤と言うのも変だが、便宜上ここに加えた。
●タキ18800形 25トン積
18800形(図面編4) 昭和45年富士重製で、この積荷で唯一の形式。

■塩化メチレン
 別名メチレンクロライド、ジクロルメタン。無色透明の香気ある液体で、融点−97℃、沸点40℃と揮発しやすく、比重は1.33と大きい。有機塩素系溶剤の中では比較的低毒性のため、溶剤として多用される。純度保持のためタンク材質はステンレス鋼を用い、低沸点のため熱絶縁を持つ。また水分で加水分解して腐食性の塩酸を生ずるため、タンク内に流入する大気を乾燥するための吸湿装置を持つ。
●タム7700形 15トン積
ロット表
 我国塩化メチレンタンク車の元祖で、昭和35〜40年に4ロット4両が三菱、富士重、日立で製作された。
7700
S3512三菱製で信越化学工業KK向。
7701
S3702富士重製で信越化学工業KK向。

●タサ6100形 20トン積
ロット表
 タム7700形の増備車で昭和45〜49年に3ロット4両が日立と富士重で製作された。ヨンサントウによる2軸車製造禁止のため、小型のボギー車となる。
6101
S4502日立製で信越化学工業KK向。

●タキ6800形 30トン積
 塩化メチレン初のボギー車で、昭和36年に1ロット2両が富士重で製作された。クロロホルム専用車であるタキ9000形に酷似している。

 6800形(図面編7)


●タキ24600形 35トン積
 最後に製作された塩化メチレン専用車で、昭和49年に1ロット1両が日車で製作された。時節柄ドームレスタンク体である。

24600
S4907日車製で旭硝子KK向。


■クロロホルム
 香気ある無色液体で麻酔性があるが有毒。融点−64℃・沸点62℃で、比重は1.48と大きい。工業的にはフロンガス原料として大量に消費されていたが、温暖化防止の観点から使用量は急減した。塩化メチレンと同様に吸湿装置を持つが、地上に乾燥空気供給設備を持つ場合はその限りではない。分解残液によるタンク腐食を防止するため、タンク内の洗浄装置や傾斜したタンク体など工夫した車両もある。

●タキ6810形 33トン積
 塩化メチレン専用であったタキ6800形の改造車で、液出し方式を上出し式に変更した。計画時は2両改造の予定だったが、結局実現したのは1両である。
6810
S4802富士重でタキ6800形6800を改造。三井東圧化学KK向。

●タキ9000形 35トン積
形式解説
 初めてのクロロホルム専用車で、製造時期によりさまざまな形態がある。
9000 9007 9010 9013
9018 9022

■四塩化炭素
 主としてフロン原料で、純度保持のためタンク材質はステンレスで、低沸点のため熱絶縁を持つ。
●タム5600形 15トン積
ロット表
 2両あるが、いずれも日本曹達KK所有かつ他形式からの改造車である。
5600
S3302日車支店でタム5023を改造。日本曹達KK向。
5601
S3512日車支店改造、タム278の改造車。日本曹達KK向。

●タキ6100形 30トン積
ロット表
 30トン積のボギー車で、タンク体は小型である。
6104
S3610富士重製で伊藤忠商事KK向。
6107
S3812富士重製で関東電化工業KK向。

●タキ7000形 35トン積
ロット表
 35トン車のうち初期の車両。
7004
S3808日車支店製で日本曹達KK向。初期のタイプでタンク体が細く長い。
7011
昭和39年日車支店製で住友化学工業KK向。タキ7004に似るが僅かに低比重のためタンク体が長い。
7011
S3912日車支店製で日本曹達KK向。後期タイプでタンク体が太く短くなった。
7012

●タキ7050形 35トン積
形式解説
 35トン車のうち後期の車両。タキ7000形と形式を分けたのは軽量化のためか。
7051 7055 7060 7062
7068

■トリクロールエチレン
 東亜合成の商品名「トリクレン」が有名。戦前から不燃性脱脂洗浄剤として多用されていた。
●タム5400形 16トン積
5400
専用種別は「トリクレン」。S2702東急でタ1000形1047を改造したもので、元々はタム100形101。日米石油KK向。

●タム8600形 15トン積
ロット表
 トリクロールエチレンとなってからの第一号車。
8600
S4001日車支店製で東亜合成化学工業KK向。
8601
S4301汽車東京製で東亜合成化学工業KK向。両側ブレーキを装備。

●タキ200二代形 30トン積
 タム8600形のボギー車版で、さまざまな構造が混在。
ロット表
200二代
S3805富士重製で関東電化工業KK向。新製車。
202
S4206日車支店でタキ2800形2814を改造。
211(第237週)
昭和44年汽車東京製で東亜合成化学KK所有、10系タンク車の一種。
213
S4703富士重でタキ2600形22614を改造。関東電化工業KK向。

■トリクロールエチレン・パークロールエチレン兼用
 パークロールエチレンはプラスチックの溶解性低いため、ドライクリーニング溶剤に賞用された。
●タキ20700形 35トン積
ロット表
 タキ200形の発達形式で、タンク体はステンレス鋼製。高比重のため台枠の割にはタンク体が小さい。設計比重は1.62。
20700
S4603富士重製で関東電化工業KK向。タキ200形の増備車。
20701
S4903富士重製で関東電化工業KK向。保安対策車。
20702
S4907日車製で旭硝子KK向。S字管を持つため大分印象が異なる。

■トリクロルエタン
 通称「トリエタン」、トリクロルエチレンより低毒性の溶剤として、一時期多用された。
●タキ21800形 35トン積
ロット表
 この専用種別で唯一の形式。メーカーの関係でタキ15800形に似る。設計比重は1.3。
21801
S4802日立製で東洋曹達工業KK向。

■プロピレンダイクロライド
●タキ650形 35トン積

ロット表
 この専用種別で唯一の形式で、昭和39〜50年に三菱で2ロット2両が製作された。設計比重は1.16。
650
S3910三菱製で周南石油化学KK向。ドーム付タンク体のグループ。
651
S5003年三菱製で周南石油化学KK向。ドームレスタンク体のグループ。

050315作成、090621最終修正。