アルコールタンク車の系譜

平成14年10月25日修正

私有貨車

研究所

Lv2

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■アルコールタンク車のはじまり タサ3000形

 我国でアルコールの大量輸送が始まったのは、国策により自動車用ガソリンへ混用されるようになってからである。これに応じて製作されたのがタサ3000形20トン積ボギー車で、我国初のアルコール専用車として、昭和13年から昭和16年にかけて80両が製作された。また同様の車両が10両、台湾向にも製作されている。
 このようにアルコールタンク車は、10トン積から15トン車を経てボギー車となってゆく正規の発達ルートを経ることがなかった点に注目して頂きたい。昭和16年にはタム200形を改造して10トン積アルコール専用車タ2000形が誕生したが、僅か2両の小世帯であった。なお同形式は、戦後一両がタム900形からの改造により追加されている。

タサ3000形3000 【特別編73】

昭和13年8月新潟製。

タサ1000形1012 【特別編110】

昭和19年1月新潟製のタサ3081を昭和23年に改造した車両。タサ3000形時代は保冷キセを持っていた。

タ2000形2002 【特別編287】

昭和26年11月新潟でタム900形972から改造された。


■戦争によるドサクサ

 開戦によりアルコールの需要は急増し、昭和17年10月には敵産管理法で接収されたタキ1・50形ガソリン専用車をアルコールに専用種別変更し、それぞれタキ500・600形とした。これ等がアルコール専用30トン車の嚆矢だが、戦後元の所有者に返還されると、形式番号はそのままでガソリン専用に復元されてしまった。
 さらに余剰となった二硫化炭素専用車の一部は「エタノール及びブタノール、アセトン」などの輸送車に転用された。
 また昭和19年には30トン車の新製が計画され、タキ800形計画30トン車として図面も作成されたが、結局実現しなかった。また軍所有としてタサ3300形計画20トン車も計画された。

タキ500形502 【特別編106】 P:堀井純一

昭和17年10月にタキ1形3を専用種別変更した車両。

タキ600形603 【特別編228】 P:堀井純一

昭和17年10月にタキ50形53を専用種別変更した車両。


■30トン車の登場 タキ3500形

 戦後初の増備として、昭和25年に20トン積のタサ3200形が製作されたが、僅か3両に終わった。
 タキ800形計画が幻となったため、昭和29年に登場したタキ3500形が初めての30トン車となった。昭和29年から昭和39年にかけて3500〜99,13500〜78の179両が新潟・造機・富士重・汽車東京・川崎・飯野で製作、東急でタキ1500形から改造された。外観・構造はタキ3000形に酷似するが、僅かに容積が小さく、その分車体が短かくなっている。なお、一部にはタキ3000形と同一寸法の車体を持つ車両もあった。所有者はタキ3536が協和発酵工業KKだった以外は、全て内外輸送KKであった。
 昭和36年、今まで空白であったアルコール専用タムが、タム8100形として初めて新製された。但し新製車はトップナンバーの1両だけで、10両ある増備車は、全てタム3700形メタノール専用車からの改造で賄われている。
 昭和39〜42年の間はアルコール専用車の増備がなく、このため99系のアルコール専用車は、実現することなく終わっている。

タキ3500形3530 【第95週】

昭和34年7月川崎製。

タンク容積が約一割大きく、タキ3000形と同一のグループ。

タキ3500形3535 【特別編232】

昭和34年10月富士重製。

協和発酵工業KKの所有者で、タキ3500形179両では唯一、内外輸送KK以外が所有する車両であった。

タム8100形8100 【特別編279】

昭和36年10月富士重製。

アルコール専用のタムで、唯一の新製車。


■ステンレス内貼り車の登場

 昭和33年、積荷の純度保持のため、接液面をステンレスとしたアルコール専用車が登場した。当時はステンレス材のコストが高かったため、普通鋼製のタンク内面にステンレス薄板を貼り付けた。タキ7200形がそれで、トップナンバーはタキ3500形の改造だったが、2両目以降は新製車となった。8両が製作されたが、後には化成品輸送用に転用され、7206、07には遮熱キセが追加されている。
 またステンレス内張りを持つ20トン車として、昭和35年にタサ5000形が製作されたが、一形式一両に終わった。

タキ7200形7205 【特別編118】

昭和34年7月富士重製。

タキ7200形7207 【特別編118】 P:堀井純一

昭和34年7月富士重製。

タキ7205と同一ロットだが、後天的改造により保冷キセを追加した車両。


■35トン車の出現 タキ7250形

 99系のアルコール専用車が製作されなかったため、35系の一員として昭和42年に誕生したタキ7250形が、初めて35トン車となった。昭和46年までに7250〜7299,17250〜17299,27250〜27264の115両が川崎・富士重・飯野で製作されている。

▼タキ7250形7291

昭和44年7月川崎製

両側ブレーキ装備の35系フェーズB。


■ステンレス製タンクの採用

 タキ13700形は、タキ7250形のタンク体をステンレス製にしたもので、昭和44〜49年に30両が製作された。本来はウイスキーなど高級蒸留酒の積載用だったようだが、晩年は各種の化成品輸送に活用されていたようである。現時点では昭和49年2月に製作された13720〜29が、最後のアルコール専用車で、38系タンク車のアルコール版は、結局製作されずに終わっている。

▼タキ13700形13721

昭和49年2月富士重製

TR41E装備の35系フェーズC。


平成13年10月24日 修正。

平成14年10月11日 修正。
平成14年10月11日 タム8100形8100を追加。


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