吉岡心平のマーク

タ580形580

私有貨車

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タ550形
タ600形

 番号
[ロット表]


タ1587

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特別編696
特別編698

積荷
●構造

入口


 タ580形には謎がある・・・

 従来の史観では、タ580形はタ550形3軸車を、3軸貨車の製作禁止に伴い、タンク体はそのままで下廻りをボギーにしたものとされてきた。
 ガソリン・石油類・ベンゾール等の例では、3軸車と後継となるボギー車の間には、外観・寸法面での共通性が強く見られる。
 ところが液化アンモニアの場合は、タ550形552,553とタ580形では、同一メーカーで同一日に落成したにも拘らず、両者のスタイルは全く異なる。更に不思議なのは、通常なら車体が長くなる筈のボギー車の方が、車体長が短かくなっている点だ。そして一年後に同社で増備されたタ554は、タ580形でなくタ552,553の寸法を受け継いでいるのだ。
 このことから、タ580形は3軸車禁止の為ではなく、小型ボギー車を特に指示したユーザーのための特製車だったのではないかと言う仮説が生まれる。タ580と言う半端な数字もそのその所為ではなかろうか。結果として、その後の3軸車製作禁止により、液安の標準形式になったのは皮肉なことだが・・・
 更に気になるのは、常備駅が三井三池線内であ

る点だ。まさに三池在の三井系企業こそ、小型ボギー車を好んだユーザーであったからである。

 タ580形は10トン積液化アンモニア専用車で、昭和10年10月大阪鉄工で580〜582の3両ロットで製作された。

 タンク体は普通鋼を鋲接で組立たもので、直径1,900mm・長さは7,120mmであった。周囲には保冷キセがあり当時は灰白色(=アルミニウムペイントの色)に塗装されていた。
 荷役装置はタンク上部に弁類を分散配置し、3個のプロテクタには液入弁・液出弁と安全弁、そしてマンホールが収納されていた。
 台枠は平型で長さは8,000mm・BC間距離は4,900mmと短い。当時の私有貨車はメーカー毎に独特の台車を履いており、本車は軸距1,650mmの菱枠台車(TR16相当)であった。

 落成時の所有者は三井窒素工業KK・常備駅は大牟田であった。昭和12年2月には東洋高圧工業KK所有となり、この状態で戦争と戦後の復興を生き延びた。昭和35年10月に茂原駅常備となったが、昭和36年4月に廃車となった。


【特別編697】060815作成R4A、070827R4A2、081008R4BY。

タ580形580の写真

【写真1697】 タ580形580 P:吉岡心平所蔵