専用種別シリーズ 過酸化水素 |
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2003/4/25作成 |
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タム8000形 15トン積過酸化水素専用タンク車 |
わが国の過酸化水素専用車は昭和37年2月に車籍編入された15トン積みのタム8000形8003と,20トン積みのタサ5600形5600,5601の3輛が嚆矢である。所有者は安宅産業で,15トン積車と20トン積車を競作したが,量産は20トン積車であるタサ5600形で行われたため,安宅産業のタム8000形は1輌で終わってしまった。メーカーは日立製作所である。なお,安宅産業所有者は東海電化工業が生産する過酸化水素の販売と輸送を受け持った商社である。 安宅産業から遅れること3ヶ月,タム8000形のトップナンバーが落成した。メーカーは汽車會社で,所有者は江戸川化学工業である。江戸川化学工業は三菱江戸川化学,さらに三菱瓦斯化学と改称している。安宅産業と異なり15トン車が取引単位に合致したようで,その後も本形式を増備し続け,計12輌と本形式の大多数を占めるに至った。一方,タサ5600形は1輌も新製しなかった。 過酸化水素専用車中,タム8000形だけを2輌所有した三徳化学工業があったが,4年後の昭和42年に日本パーオキサイド所有となった。常備駅は苫小牧で,郡山から運用されていた。メーカーは過酸化水素専用車では少数派の日本車輌である。 |
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さて,タンク車輸送される過酸化水素は,安宅産業が31.5%水溶液で比重1.10,江戸川化学と三徳化学が35%水溶液で,比重1.12であった。このため,安宅産業所有車8003は,実容積が0.4m3ほど大きかったのであるが タム8000形は,アルミタンク車の構造が確立された時期の製造であるため,タム100形に比べ外観・構造の違いは少ない。純アルミ製のタンク体は強度を確保するため,内部に4枚の皿形鏡板を用いた強化型で,受台も強度の低い純アルミタンク体との面圧を下げるため,大型である。個数は三菱が幅広のものを2組,汽車,日立,日車が幅狭のもの4組である。 荷役は液出入管と空気管を用いた上出し方式で,空気管には防塵用のフィルタが設けられている。また,分解・発生した酸素を常時逃がすための空気抜き装置がドームに設置されている。 安宅産業所有の8003は安宅産業が伊藤忠商事に吸収合併された昭和52年に東海電化工業へ移ったが,東海電化工業も旭電化に吸収合併され昭和62年に廃車となった。 |
ロット 1/タム8000 製造:S37汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
三菱瓦斯化学所有車は荷役装置をドーム頂部に集中配置し,S字管を持たないためすっきりとした外観である。この形態はタキ1150形にも継承されている。 撮影:福田孝行 S63/03/04 博多港 |
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Lot 1/タム8001 製造:S37汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
三菱瓦斯化学所有車のタンク体はアル無塗装であったが,ブレーキシューの鉄粉による汚損が甚だしく,何時しか銀色に塗られてしまった。
撮影:福田孝行 H08/04/20 新南陽 |
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Lot 1/タム8002 製造:S37汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
タンク受台の塗色はタンク体と同じ銀色であったが,何時からか台枠と同じ黒色となってしまった。
撮影:福田孝行 H08/04/20 新南陽 |
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Lot 2/タム8003 製造:S37日立 実容積 :13.8m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,250mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
なかなか「格好いい」スタイルである。日立製はドーム直径が小さく頂部はフランジ構造である。また,荷役用の液出し管と空気管にはS字管を設けている。 撮影:堀井純一 S55/12/14 吉原 |
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Lot 3/タム8004 製造:S37汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
ロット1の約半年後に製造された。外観・構造はロット1と同様である。
撮影:福田孝行 S62/10/27 安治川口 |
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Lot 3/タム8005 製造:S37汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
撮影:福田孝行 H05/08/07 南四日市 |
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Lot 3/タム8006 製造:S37汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
撮影:福田孝行 S57/01/18 南四日市 |
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Lot 3/タム8007 製造:S38汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
ロット2の3ヶ月後に製造された。外観・構造はロット2と同様である。
撮影:福田孝行 S57/03/07 安治川口 |
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Lot 3/タム8008 製造:S38汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
撮影:福田孝行 S62/06/06 東港 |
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Lot 4/タム8009 製造:S38日車支店 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
三徳化学工業所有で,日本車輌で製造された。汽車の図面に基づいて製造されたようで,外観・構造・寸法とも汽車製と同一である。
『日車の車輌史』編集部提供 |
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Lot 4/タム8010 製造:S38日車支店 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
『日車の車輌史』編集部提供 |
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Lot 5/タム8011 製造:S39三菱 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,645mm タンク長さ :6,670mm 台枠長さ :7,400mm 軸距 :4,450mm
本形式で異彩を放つ三菱製である。前年に新製したタキ7650を短縮した外観である。また三菱製の過酸化水素タンク車はこれらにタキ1152を加えた3輌が全てであった。 撮影:福田孝行 S62/08/08 安治川口 |
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Lot 6/タム8012 製造:S40汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
タム8008から2年ぶりに汽車で製造された。外観・構造・寸法は従来ロットと同一である。
撮影:福田孝行 H08/02/05 東港 |
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Lot 6/タム8013 製造:S40汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
撮影:福田孝行 S62/12/06 南四日市 |
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Lot 6/タム8013 製造:S40汽車 実容積 :13.4m3 タンク内径 :1,700mm タンク長さ :6,300mm 台枠長さ :7,000mm 軸距 :4,200mm
撮影:福田孝行 H05/08/07 南四日市 |
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写真提供のお礼 堀井純一様から貴重な写真を提供して頂きました。ありがとうございます。 『日車の車輌史』編集部様から貴重な写真を提供して頂きました。ありがとうございます。 |