福田孝行の貨車ホームページ |
■HOME ■形式・番号別さくいん ■貨車写真館 ■銘板研究室 ■構造・部品研究室 ■台車研究室 ■CADセンター ■資料室 |
今回のアルバムは,現在でも活躍中の数少ないタム,タム8000形の登場である。現在でも撮影可能なため,撮影された方も多いであろう。 タム8000形は昭和37年にタサ5600形20トン車と共に登場した,わが国初めての過酸化水素専用車で,昭和40年までに15輌が新製された。写真の8014はそのラストナンバーで,新製時の所有者は三菱江戸川化学(株)である。同社は昭和46年に日本瓦斯化学工業(株)と合併し,三菱瓦斯化学(株)と改称した。 三菱瓦斯化学(株)は本形式を好んで増備した会社で本形式15輌中12輌を占めた。過酸化水素専用車の所有者として,東海電化工業(株)や日本パーオキサイド(株)が有ったが,既にタンク車輸送を廃止しているため,現在では,過酸化水素タンク車を所有・運用している会社は,三菱瓦斯化学(株)が唯一となってしまった。 過酸化水素は比重1.46の液体で,強力な酸化剤である。第二次世界大戦の時,ドイツで量産され,日本でも「秋水」として試作されたロケット戦闘機の酸化剤として使われたことのある液体で,高濃度の過酸化酸素を浴びると,人間が溶けてしまう恐ろしい液体である。タンク車輸送される過酸化水素は水で薄めたのもので,三瓦斯化学では35%水溶液を輸送していた。用途はパルプや繊維の漂白剤として多用され,現在では,塩素に替わる漂白剤として需要は好調である。 過酸化水素は,鉄や銅などの重金属や異物の混入により激しく分解するため,タンク材質には高純度アルミニウムが用いられる。荷役方式は上出し方式であるが,空気管には防塵用のフィルタが設けられ,分解・発生した酸素を常時逃がすための空気抜き装置がドームに設置されている。写真18でドーム上の手前にある大型のもので,写真17では,独楽(コマ)のよう形状をしたものがそれである。 三菱瓦斯化学所有車は平成13年現在,全車12輌が健在である。近年過酸化酸素の需要が好調なため,しばらくは安泰であるが,一番若い本車でも車令36年を超えるため,安心はできない。 |
||||
同一専用種別 タサ5600形5611 |