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タサ5300形5300

私有貨車


 千歳の山崎さんから、地元北海道の貨車解説を依頼された。その形式とはタサ5300形である。
 石油類タンク車には「C重油輸送用車」と呼ばれるジャンルがある。寒冷地では粘度が上がり荷役困難となるC重油を輸送するため、タンク体周囲に保温用のキセを巻き、タンク内部に加熱管を備えたタイプのことだ。タキ11000形やタキ20000形が有名だが、今回取り上げたタサ5300形はその嚆矢と言ってよいだろう。

 タサ5300形は昭和35年2月日車支店で2両製作された20トン積石油類専用車である。同時に作られたタキ2100形2295、96と共に、タンク周囲に保温用断熱材と薄鋼板製のキセを装備して落成した。タサ2400形に編入せず、あえて新形

式を起こした理由は不明である。
 外観・構造は写真の通り特徴に乏しく、カマボコ形のキセの影響か一見するとタキ4200形を下出しにしたように見える。なお加熱管の入口や吐出管が厳重に保温されている点は、いかにも重装備寒地向といった装いであった。

 所有者は日本石油KK・常備駅は五稜郭だったが、昭和55年2月の油槽所廃止により5300は本輪西、5301は西港に異動した。余談だが、昭和50年代後半の北海道にはタ本形式を初め、タキ10200・タキ30000形などが配置されており、訪れるタンク車ファンを楽しませてくれたものである。前者は昭和56年11月、後者は昭和58年5月にそれぞれ廃車となった。


ガソリン・石油類専用車のガイド(タ〜タサ編)


【特別編88】010806作成、021213本文修正+リンク追加、040201R4、050412R4A、070808R4A2。

タサ5300形5300の写真

【写真1088の1】 タサ5300形5300 昭和56年7月28日 長万部駅にて P:吉岡心平

タサ5300形5300の写真

【写真1088の2】 タサ5300形5300 昭和56年7月28日 長万部駅にて P:吉岡心平