タキ１０８００形１０８００

　「クロトンアルデヒド」がピンとくる人は、有機化学系の人だけだろう。クロトンアルデヒドは別名メチルアクロレインと呼ばれるだけあって、催涙刺激性のある有毒液体。沸点は１０４℃・比重０．８５で引火性あり鉄を腐食する。製法はアセトアルデヒドを縮合したアルドールの脱水で、有機合成の中間体として使用される・・・わざわざタンク車輸送するほどの量を、一体何に使ったのだろう？

　タキ１０８００形は昭和４３年５月三菱製で一専用種別一形式一両の珍車である。

　設計比重は０．８５・タンク容積は３５．２ｍ^３で、サイズ的にはタキ２１００形に酷似していた。

　タンク体は耐食のためステンレス鋼製で、寸法は直径２，０５０ｍｍ・長さ１１，０３０ｍｍであった。タンク体の割りに大型のドーム（直径１，４００ｍｍ）が特徴的である。
　荷役方式は上入れ上出し方式で、ステンレス製のＳ字管を装備していた。
　台枠は平形で長さは１１，３００ｍｍ・ＢＣ間距離は８，０００ｍｍ、ブレーキ装置はＫＤ形空気＋両側、台車はＴＲ４１Ｃであった。

　落成時の所有者はダイセルＫＫ・常備駅は新井であった。昭和５５年１月社名はダイセル化学工業ＫＫに変わった。最近は大竹〜新井間のプロピオン酸輸送に使用されている。