吉岡心平のマーク

タ3300形3304

私有貨車


 車両研究者共通の話題に、二代目車両の数え方がある。二代目を別の車両として両数計上するか否かの問題で、格好の題材となったのが本形式などタム100二代形転用車の取り扱いであった。例えば本形式のトップナンバーは、タム1130→ タ2905初代→ タ3300→ タ3079→ タ2905→ タ3306 という経歴を辿っている。この際、タ2900形とタ3300形の場合で、それぞれ両数の数え方は異なるのだろうか・・

 タ3300形は10トン積のユーロイド専用タンク車。ユーロイドは尿素樹脂接着剤の商品名で、尿素のユリアと樹脂のロイドを「合成」したようだ。肥料用の尿素とホルマリンを自社生産していた東洋高圧にとっては、格好の製品だった訳だ。

 それではタ3304の経歴を辿ってみよう。昭和18年に15トン積の濃硝酸専用車であるタム100

二代形1100として誕生後、昭和21年8月に8トン積メタノール専用の タ2900形2900に改造され、更に昭和30年4月には10トン積ホルマリン専用のタ3050形3064となった。そして昭和33年12月、終にタ3304になった訳である。改造点は軽微で、荷重の変化に対応するため、担いバネとブレーキテコ比を調整した程度だったようだ。

 落成時の所有者は東洋高圧工業KK・常備駅は大船で、その後下関と大船で常備駅のやりとりがあったが、昭和43年10月に三井化学との合併で三井東圧化学KKとなってからは一貫して下関常備であった。晩年は下関は彦島の工場から、山陰線知井宮にあったへ合板メーカーに運用されていた。なお合板原料のラワン材が、境港から知井宮まで木材専用列車「ラワン号」で輸送されていたことも懐かしい思い出である。昭和51年8月に廃車されたので、写真は廃車体と言う事になる。


●関連形式 タ3300形13301 北海道内で1段リンクのまま残った車両の例。

●参考文献 私有貨車セミナー第32回(レイルマガジン150号) タム100形転用改造車の第3回


【特別編94】010820作成、040201R4、050429R4A、060529リンク追加、070911R4A2。

タ3300形3304の写真

【写真1094】 タ3300形3304 昭和52年8月3日 下関駅にて P:吉岡心平