吉岡心平のマーク

タム9600形9600

私有貨車

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タム9500形
タム9800形

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ロット表


タム9602

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特別編13
特別編15

●積荷
●構造

入口


 ここで紹介するのは京都にお住まいの齋藤さんのリクエストで、わが国初の超低温タンク車として有名なタム9600形である(注)

 タム9600形は昭和48〜50年に4両が日車で製作された。積荷の「LNG」は液化天然ガスの略で、マイナス100℃を超える超低温下で輸送するため、タンク体は内外の二重とされ、その間は熱絶縁のため真空となっていた。これが「魔法瓶タンク車」と呼ばれる所以である。

 タム9600は昭和48年11月に製作された第一号車で、試作車的色彩が強い。タンク材質は内タンク体がステンレス鋼(SUS304)、外タンク体は溶接構造鋼(SM400)である。内外タンク体の間隙にはパーライトと呼ばれる粉末が充填され、荷重と衝撃力は内外タンク体を結ぶリンクにより伝達されている。
 荷役用の配管・弁装置は片側の妻に集中されており、外側には弁装置を覆う扉として本車のチャームポイントであるロールアップ型のシャッターが設けられていた。惜しいことに、量産車である9601以降は通常の開戸に変更されている。

 台枠は平台枠で、長さは18,150mm・BC間距離は12,750mmである。オーバーハング長が2,700mmと異常に長いのは、弁装置側のタンク体が奥まっているため、この荷重を負担するようにしたためだ。自連緩衝器には、入換時の衝撃を緩和するため、大容量ゴム緩衝器であるRD90形を使用した。台車は落成時は本形式唯一のTR211C形だったが、直ぐにオイルダンパ形式を変更したTR211E形に改造された。このためTR211Cは極く短期間しか存在せず、幻の台車のひとつとなっている。

 所有者は東京ガスKK・常備駅は鶴見川口で、運用は日立への都市ガス原料用LNGの輸送であった。当初は東京の基地と各衛星都市間に30両程度を運用するとの噂もあったが、結局この4両に終った。原因は、鉄道輸送に特有の入換時の衝撃が問題であったと言われている。
 またこれと並行して液体酸素や液体窒素用のタンク車の概念設計も行なわれたが、結局実現しなかった。幻に終ったTR223台車装備の26トン積液体酸素タンク車など、是非見てみたかったものである。


【特別編14】010125作成、021020本文修正+リンク追加、040210R4、050224R2A、070916R4A2、071014
ロット表R3追加、090128R4BY。


タム9600形のロット表

ロット 番号 製造年 製造所 落成時の所有者
9600 S4811 日車 東京ガスKK
9601〜9603 S4912〜5002 日車 東京ガスKK

タム9600形9600の写真

【写真1014】 タム9600形9600 昭和56年8月16日 塩浜操駅にて P:吉岡心平