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貨車構造・部品研究室−006


安全弁(石油系タンク車用)

 

構造・部品−004

構造・部品−005

 

2002/2/20 作成

2002/3/31 修正


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構造-004 航送用フック掛け(旧型)

今回は,石油系タンク車に不可欠で,模型でも目立つパーツである安全弁について,図面を交えながら解説してゆこう。

 

■タサ1用安全弁

 最初の図面は,大正3年に新製されたフア27000M44形(昭和3年の改番でタサ1形となった)使われた安全弁である。外観は,タキ3000形などに使用されたL型安全弁似よく似ているが,ガスの出口場所が全く異なっていた。

(3)は弁とフタが一体となったのもで,正圧用ばね(5)が,ばね座(6)と心弁棒(4)により固定されてる。

 タンク内圧が上昇すると,弁(3)が押し上げられ,ガスが弁座の隙間から逃げる機構となっていた。

 このガスが逃げる部分は雨水が溜まりやすい構造で,水抜き穴が詰まると,弁が水没する問題点があった。

 タキ3000形などに使用されたL型安全弁はこの辺が大幅に改善されている。

 

 

図14 タサ1用安全弁

 

■100mmL型安全弁

 L型とは正式名称ではないが,タキ3000形式などのドームを持つ石油系タンク車に使用されている安全弁で,ドーム側面のフランジにボルト止めされている。図23は昭和20年4月24日に作図された国鉄標準図で各メーカー共この図面に基づいて製作された。

本体(1)は鋳鉄(FC200)製の一体構造で,内部に弁(3)及びバネ(2)を設けている。外観上は本体とフタ(6)のみ見えている。

 タンク内圧力が上昇すると,弁(3)が押し上げられ,弁座周囲の隙間からガスが下へ抜ける構造となっている。 安全弁作動圧力の設定は加減ネジ(5)により行い,押えボルト(8)により固定している。

図15 100mm L型安全弁(VC23725)

 

■75mm内蔵型安全弁

 タンク車が脱線転覆した場合,外部に露出している安全弁が折損し,積荷が漏洩する事故が懸念され,安全対策上好ましくなく,保安度の 改善が課題となっていた。

 ドームレス構造となったタキ35000形では内蔵型安全弁が開発され,弁機構全体がタンク内となった。さらに,昭和42年8月8日新宿駅構内で米タンが脱線炎上する大事故が発生し、弁類の内蔵化が徹底された。

 タンク内圧力が上昇し,設定圧力になると弁(2)は弁棒案内(5),弁心棒(6),バネ座(8)を伴って,バネを圧縮しながら押し上げられ,弁座(4)を離れ,ガスが噴出する。

 圧力が所定に戻るとバネの力で元に復帰する。作動圧力の調整は調整ナット(10)により行う。

■安全弁設定圧力

 昭和36年に制定されたタンク車のJIS規格(JIS E7101)及び昭和37年に制定されたタンク車設計基準(国鉄規格SZ10)では安全弁設定圧力等が次のように定められていた。
 安全弁設定圧力 1種タンク車    :1kgf/cm2
             2〜4種タンク車 :2kgf/cm2
 タンク試験圧力  1種タンク車   :2kgf/cm2
             2〜4種タンク車 :4kgf/cm2
 数量   1種 : 1個
       2種 : 2個(標記荷重20トン未満は1個)

 安全弁の規定は,昭和37年に制定されたタンク車設計基準(国鉄規格SZ10)の見直しが昭和46年に行われ,昭和49年のJISタンク車の改正に一部が反映され,国鉄分割民営化時に制定された貨車構造心得に引き継がれている。

 改正の要旨は、AAR(米国鉄道協会)及び高圧ガス保安協会で採用されている,火災時にタンク破壊を防止する考え方を取り入れたもので,圧力3.2kgf/cm2のときに最大噴出し量となる設計とし,タンクの耐圧試験圧力を1種も含め4kgf/cm2とした。安全弁の設定圧力も1.8kgf/cm2に統一した(1種は1kgf/cm2のまま)。

図16 75mm内蔵式安全弁(FC3304)

■75mm内蔵型正負圧式安全弁

 タキ43000形で開発された安全弁である。本形式はフレームレス構造のため,気温の低下等によりタンク内圧力が大気圧より低下した場合,タンクに歪みが生じ運転に支障をきたす恐れがあった。これを防止するため,タンク内が負圧となった場合,大気を吸い込む構造としたものである。

 内蔵型安全弁(図24)に負圧作動機構を追加したもので,正圧弁の形状が大幅に変更され,テフロン製シート(図20部番3)がステンレスのメタルタッチ構造に改良された。溶接により一体となった弁座のタッチ面はステンレスを盛金した合理的なものである。また,負圧作動時に大気がタンク内に流入するため,防虫網が設けられた。

図17 75mm内蔵式正負圧式安全弁(FC3404)

■正圧作動状態

 タンク内圧力が上昇し設定圧力以上となると,正圧弁(2)は弁心棒(6),調整ボルト(13),バネ案内(10)を伴って正圧用バネ(11)を圧縮しながら押し上げ、ガスを放出する。圧力が所定に戻るとバネの力で元に復帰する。

 作動圧力の微調整は調整ナット(10)により行うが,1種,2種ではバネ(11)を変更している。

■正負圧作動状態

 タンク内圧力が下がり0.2kgf/cm2の負圧以下となると,負圧弁(3,4,5)が負圧用バネ(12)を圧縮しながら押し下げ,大気をタンク内に吸気する。圧力が所定に戻るとバネの力で元に復帰する。

 作動圧力の微調整は調整ナット(10)により行う。

図18 正圧作動状態説明図        

図19 負圧作動状態説明図      

 

■分解写真

  最後に安全弁の分解写真をご覧願いたい。

図20 75mm内蔵式正負圧式安全弁(FC3404)分解図


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