吉岡心平のマーク

タム9300形

私有貨車


 昭和43年9月18日、日本ゼオン高岡工場の塩化ビニルプラントで爆発事故が発生した。復旧までの間は、塩ビモノマーを他社より購入することになったため、その輸送が急務となった。このため塩ビの原料である塩素輸送用であったタキ5450形を、ショートリリーフとして転用改造したのが本形式である。

 タム9300形は16トン積液化塩化ビニール専用車として、昭和44年2月三菱でタキ5450形25454〜25458を改造した。種車は昭和43年12月三菱製で、落成直後の新車であった。

 タンク容積は20.2mと種車のままだが、塩化ビニルのガス定数は1.22と塩素の0.8より大きいため、荷重は16トンに減少した。

 改造点は、短期間で原形式に復元することが予想されたこともあり軽微で、プロテクタ内部に収納されている安全弁を、種車のままでは吐出面積が不足するため一回り大型のものに交換した程度である。
 液化塩素タンク車特有の石灰箱は、そのまま残置された。塗色は法規制により黄色からグレーに塗り替えたので、これが最も目立った変更かもしれない。またブレーキ倍率は荷重減少が小さかったため、未変更である。

 改造時の所有者と常備駅は三菱商事KK・能町であった。当初の計画通り、プラントの復旧後は昭和44年8〜9月にかけて、全車タキ5450形に復元された。なお、再改造後の番号は改造前の原番号に戻されている。


●関連形式 タキ5450形25458二代 タム9300形9304から復元された車両。

液化塩素専用車のガイド


【図面編13】060612作成R4A、071123R4A2。

タム9300形の図面

【図13】 タム9300形